――芸術家の使命は?
ということについて、考えています。
おそらく、それは、
――人々に感動を与えること
ですね。
「感動を与える」とは、
――生きる気力
を感じとってもらうということです。
ただ――
芸術は、人間や社会や自然の美しい部分だけを扱うのではありませんよね。
醜い部分も扱います。
けっこう頻繁に扱います。
そういう作品なり実演なりを目の当たりにしたときには、すぐに「生きる気力」を感じとるのはムリでしょう。
たぶん、嫌悪や不安を覚えるのが当然です。
では、人間の醜い部分を扱うのは、芸術の使命とはズレるのでしょうか。
たしかに――
そういうスタンスで活動をしている芸術家も少なくありませんね。
そのほうが、安全で安心かもしれません。
でも――
と僕は思うのです。
芸術は、人間の醜い部分も扱うべきだ、と――
その上で、人々の「生きる気力」を感じとってもらうべきだ、と――
つまり、人間の醜い部分を扱った作品や実演によって、いったんは嫌悪や不安を覚えさせたあとで、「生きる気力」を感じとってもらうべきだ、ということです。
難しいでしょうね。
かなり難しいと思います。