僕は男で、年齢はアラフォーの域に達しておりますが――
なぜか女の人たちに、よく、
――手がきれい。
といわれます。
きょうもクリーニング屋さんの老婦人に、
――女性みたいな優しい手をしている。
といわれました。
「商売がら、色々な男性の手をみているけれど、あなたのような手は初めてだわ」
と。
ふつうは、
――ゴツゴツ
か、
――プクプク
かのどちらからしいのですが――
僕は、
――指がスラッと伸びていて「優しい」
のだそうです。
(ふう~ん)
と思いました。
「優しい」といわれたのは、初めてなのですね。
手のことをいわれるのは、実は今に始まったことではありません。
子供の頃から、
――女の子の手みたい。
といわれて育ちました。
正直なところ、そういわれてもあまり嬉しくはなかったのですが――
30歳を過ぎた頃から、だいぶ気持ちが変わってきました。
(まあ、いいか)
と――
ちょうど、女性が主人公の小説を何の臆面もなく書けるようになってきた頃と一致します。
たぶん、自分の中の女性らしさが自分の小説を豊かにすると気づいたことが大きいのですね。
こう書くと、
――この人は性のアイデンティティが揺らいでいるのか。
と心配される向きも出てくるかもしれませんが――
幸いなことに――
あるいは、残念なことに――
そういうことはありませんよ。
少なくとも、オフラインのマル太のマインドは、呆れるくらいに男です。
だからこそ、こんなことをこんなところで、チョロチョロと書けるのでしょう。
――僕は、女性みたいな優しい手をしているらしい。
などとね。