物語は、何らかの対立をテーマに取り込むことで、活力を帯びます。
例えば――
組織か個人か――
自由か平等か――
精神か物質か――
抵抗か服従か――
闘争か協調か――
恋愛か生活か――
そして――
対立をテーマに取り込んだ物語に重厚さをもたらす要因は、主人公と対立する登場人物――つまり、敵(かたき)役――の造形です。
敵役の造形に間違いがなければ――
物語は、最後まで鮮度や活力を保ちます。
極端なことをいえば――
主人公は、いくら凡庸であっても、かまわないのですね。
敵役が個性的で魅力的であれば、それでいいのです。
なぜならば――
「カッコいい敵役」に立ち向かう主人公は、それだけで「カッコいい」のですから――
主人公の活躍ではなく、敵役の活躍が、物語の浮沈を決めるのです。
敵役をどのように活躍させるかで、テーマとなる対立の実態が決まり――
どのような対立が展開されるかで、物語の背景や雰囲気が決まります。
敵役が大人物なら、物語は重厚になり――
敵役が小人物なら、物語は軽妙になります。
物語を重厚にしたいのなら――
敵役が主人公を吹き飛ばすくらいで、ちょうどよいのです。