マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

物語を重厚にしたいのなら

 物語は、何らかの対立をテーマに取り込むことで、活力を帯びます。

 例えば――
 組織か個人か――
 自由か平等か――
 精神か物質か――
 抵抗か服従か――
 闘争か協調か――
 恋愛か生活か――

 そして――
 対立をテーマに取り込んだ物語に重厚さをもたらす要因は、主人公と対立する登場人物――つまり、敵(かたき)役――の造形です。

 敵役の造形に間違いがなければ――
 物語は、最後まで鮮度や活力を保ちます。

 極端なことをいえば――
 主人公は、いくら凡庸であっても、かまわないのですね。

 敵役が個性的で魅力的であれば、それでいいのです。

 なぜならば――
「カッコいい敵役」に立ち向かう主人公は、それだけで「カッコいい」のですから――

 主人公の活躍ではなく、敵役の活躍が、物語の浮沈を決めるのです。

 敵役をどのように活躍させるかで、テーマとなる対立の実態が決まり――
 どのような対立が展開されるかで、物語の背景や雰囲気が決まります。

 敵役が大人物なら、物語は重厚になり――
 敵役が小人物なら、物語は軽妙になります。

 物語を重厚にしたいのなら――
 敵役が主人公を吹き飛ばすくらいで、ちょうどよいのです。