マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「落としましたよ!」と呼び止められるか

 電車に乗っていて、目の前に座っていた人が、駅に降りようとして、マフラーなどを落としたときに――
 その人が、それを落としたことに気づかないまま降りようとしたら――
 皆さんは、どうされます?

 ――落としましたよ!

 と呼び止められますか。

 実は――
 呼び止めるには、かなり勇気が必要なのですね。

 まさに今、駅に降りようとする人を呼び止めるのです。
 かなり大声で呼び止めないと、気づいてもらえないのですよ。

 まわりに大勢の乗客がいる中で「落としましたよ!」と大声を出すのは、それなりの勇気が必要です。

 しかも、大声を出されたほうは、間違いなくビックリはする――
 場合によっては、一時的にせよ、不快な思いをする――

 ですから――
 5年くらい前の僕は――
 そうしたときに大声で呼び止めることができませんでした。

 他の誰かが「落としましたよ!」と呼び止めるのを、きいているだけでした。

 今は違います。
 率先して「落としましたよ!」と呼び止めています。

 なぜ変わったのか。

 自分でマフラーを落とし、大声で呼び止められたことがキッカケでした。

 やっぱり――
 呼び止められたら、ビックリはするのですよね。

(あれ? 今、僕、叱られたの?)
 と不快に思うほどです。

 ただ――
 そうやって呼び止められたことで、マフラーを落としたことに気づかされ――
 しかも、そのマフラーが自分のお気に入りであったりすると、
(ああ、助かった)
 と感謝をするようになる――
 最初は不快に思うけれども、結局は感謝をする――

 だから――
 変わったのです。

 呼び止められる側の心理が、よくわかったからこそ――
 呼び止める側に回ったときには、躊躇をしないで済むようになったのですね。

 何事も、身を以て体験すれば、違いますね。