俳優さんたちは、TVドラマの撮影などで、自分のお芝居をVTRでチェックするそうです。
(自分の映像なんて、よく冷静にみられるなあ)
と思うのですが――
きっと、それは、もはや「自分」ではなくなっているのですね。
分析や修正の対象になっている――
つまり、主体ではなく、客体になっている、ということです。
そのことを実感するには――
鏡と写真とを比べればよいでしょう。
自分の顔を鏡でみるときに――
そこに写っているものは、あくまでも自分自身の顔なのです。
が――
自分の顔を誰かがカメラで撮ったとき――
そこに写っているものは、もう自分自身の顔ではない――カメラで撮った人の目を通した自分らしき者の顔なのです。
つまり――
鏡の自分は客体とはみなしにくいが、写真の自分は客体とみなせる、ということです。
その理由は、たぶん意外に簡単で――
鏡の顔は自分の意思に即応して動くけれども――
写真の顔は自分の意思に即応して動くことはないからです。