――人はパンのみにて生くるにあらず。
というのは、聖書の言葉だそうですが――
僕にいわせると、
――人は愛のみにて生くるにあらず。
です。
人は――
物質的な満足だけでなく精神的な満足を得るために生きるように――
善なる誠意だけでなく悪なる邪心を究めるために生きる――
ということです。
社会の中で、悪なる邪心を具象化してしまったら、大変なことになります。
たいていは法に触れるでしょう。
ですから、良識のある人は「邪心を究める」の段階に、とどめておくのです。
「邪心を究める」とは、例えば、
――なぜ、そのような悪徳に自分は惹かれるのか。
を冷静に見きわめようとする態度のことです。
この見きわめが足らないと――
人は、知らず知らずのうちに、道を踏み外すでしょう。
悪なる魔物は、善なる事物しかみようとしないものに、忍び寄るのです。
パンだけでなくサーカスを――
愛だけでなく背徳を――