マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

実在しえないものを思い浮かべられる不思議

 存在しえない世界――
 生息しえない動物――
 発生しえない事象――

 そういったものを――
 人は、ありありと思い浮かべることができるのですが――

 このことの不思議は、どんなに強調されても、強調されすぎることはないでしょう。

 なぜかといえば――

 例えば――
 幽霊が実在し、あの世とこの世とを行き来していると信じ切った上で、

 ――あの世とこの世とを幽霊が行き来できるなんて不思議だ~!

 と思うときよりも――
 幽霊などは実在しえず、あの世なども実在しえないと信じ切った上で、

 ――にもかかわらず、「あの世とこの世とを幽霊が行き来している」と思い浮かべることができるなんて不思議だ~!

 と思うときのほうが――
 心は躍動するからです。

 幽霊やあの世といった超常性の実在を仮定した上での不思議よりも――
 それら実在を仮定しない上での不思議のほうが、凄みを増すのです。

 超常性の実在を仮定した上での不思議は、それら仮定が否定された瞬間に、雲散霧消します。

 砂上の楼閣は、たとえ、それが壮麗であっても――
 人の心を躍らせたりはしないものです。

 壮麗な楼閣にも盤石な基盤が欠かせません。