人の魂は――
その人の体の中に宿っているのではなく――
その人の周りにいて、その人と関わりをもっている人たちの心の中に宿っている――
と考えるならば――
魂は実在するといってよいでしょう。
もちろん――
その「実在する」といえる魂は――
自分自身の心の中に宿っている魂に限ります。
つまり、Aさんの魂は、Aさんと関わりをもっているBさんやCさんの心の中に宿っているけれども――
Bさんの心の中に宿っているAさんの魂については、その実在性は、Bさんによってのみ、確認されえて、Cさんによっては、決して確認されえない――
ということです。
が――
Cさんの心の中にも、Aさんの魂は宿っているのですよね。
ですから――
BさんとCさんとの間で、Aさんの魂の実在が疑似共有されることは――
さほど不思議なことではありません。
こうして――
Aさんの魂が、BさんやCさんの心の壁を突き抜けて、あたかも、この世界のどこかに実在している――
という錯覚が成立しえます。
Aさんが思いがけず急に鬼籍に入るなどすれば――
その錯覚は、一挙に強まることでしょう。
Aさんに関するBさんやCさんの記憶が薄れていくまで――
錯覚は続きます。