政治家などが、公の場で、いうべきでないことをいった場合には――
ほぼ必ずといってよいほどに、
――失言だ。責任をとって身を引け。
などと批判されます。
その批判は、しばしば酷であり、ときに的外れです。
どういうことか――
……
……
そもそも、
――失言
とは、
――いうべきでないことを、うっかりいってしまうこと
です。
あくまで「うっかり」であり――
これは、理性や注意力の問題です。
そうではなくて――
自分の知識や理解が足らずに、「いうべきでない」ということがわからずにいった場合には――
それは、「失言」ではありません。
――妄言
です。
――事実に反していたり、論理に適わないことをいってしまうこと
です。
これは、知性や洞察力の問題です。
失言によって出処進退を厳しく問われるのは――
理性が緩んでいたり、注意力が散漫になっていることによります。
たしかに、理性の緩みや注意力の散漫が出処進退に関わるほどに深刻であるということは、大いにありうるでしょうが――
常に必ず、そこまで深刻というわけではありません。
人は誰しも、精神力を常に万全に研ぎ澄ませておくことは不可能です。
失言当時の状況や文脈をかんがみると、
――まあ、これは仕方がなかったんじゃないか。
と思えるような事例は、そんなに珍しくはありません。
これに対し――
妄言によって出処進退を厳しく問われるのは――
知性が乏しかったり、洞察力が貧弱であることによります。
知性の乏しさや洞察力の貧弱は、少なくとも政治家などのように豊かな知性や強靭な洞察力が求められる者については――
常に出処進退に関わるほどに深刻です。
妄言は失言とは違うのです。