もっともらしい理論体系を耳にしたときに――
もし、その理論の実証のプロセスが明らかにされていなかったら――
ひとまずは疑ってかかるのがよいでしょう。
実証なき理論は、虚構です。
虚構は、それ自体は悪いものではありません。
現実から遊離していることを割り切って楽しむぶんには全く構いません。
が――
虚構を現実と混同させてしまうと――
深刻なトラブルになりえます。
例えば――
ファンタシー小説を読んで物語を楽しむことには何の問題もありませんが――
ファンタシー小説に登場する魔法使いの真似を試みれば、周囲の人々との間に深刻な軋轢を生みえます。
虚構と現実との混同を回避しようと思ったら――
現実から虚構を見いだすセンスを磨くしかありません。
そのためには、実証のプロセスに習熟しておくのがよいでしょう。
つまり――
どのような手続きが踏襲されれば実証されたことになるのかを直観的に理解しておくことで――
ある理論体系が実証の裏付けを得ているかどうかを的確に見抜くことができる、というわけです。
実証のプロセスに習熟するには、どうすればよいでしょうか。
手っ取り早いのは、自然科学研究に従事してみることですが――
多くの人には、それは困難でしょう。
ですから――
次善の策として、良質の科学書を読み込むことが挙げられます。
良質の科学書とは、科学の基本である「実験や観察による仮説の妥当性の検討」に十分なページ数を割いている書籍のことです。