困っている人をみかけたら、基本的には、放っておけなくなると思いますが――
その人が本当に困っているかどうかは、簡単にはわかりません。
困っているようにみえるだけで、実際には全く困っていないとか――
困っているようにみせかけることで、逆に周囲を困らせようとしているとか――
そういうことが、ときどき、あるのです。
ですから――
困っている人に手を差し伸べようするときには――
まず、その人に寄り添い、その人がどんな人で、どんなふうに困っているのかを、長い時間を費やし、詳細に把握する必要があります。
つまり――
困っている人を助けるためには、手間と時間とがかかるのですね。
すぐに手を差し伸べることができない――
この原理的な困難が人の社会から潤滑性を奪っていることは、ほぼ間違いないでしょう。
現代社会においては、都市化が進み、地縁が薄れ、人々の関係が何となくギクシャクしていると考えられがちですが――
その前提にあるのは、
――困っている人に手を差し伸べるには手間と時間とが必要――
という原理です。
地縁の濃い時代には、ふだんから相互に深く知り合っている仲ですから、誰かが困ったときには、すぐに手を差し伸べることができたのです――
その人がどんな人で、どんなふうに困っているかが、瞬時にわかったから――