いわゆるコンピュータのワープロ・ソフトがなかった時代の文章と今の時代の文章とを比べると――
だいぶ印象が違ってきます。
何といっても、今のほうが断然に読みやすくなっている――
章の構成は整然としていて、段落の流れはなめらかで、言葉の用法は統一されている――
こうした洗練のされ方は――
やはり、ワープロ・ソフトならではのものといえましょう。
ワープロ・ソフトのなかった時代の文章は、一読して野暮ったいのですよね。
章の構成は雑然としていて、段落の流れはぎこちなく、言葉の用法は場当たり的で――
読むのが、つらくなってくる――
もちろん――
当時の文章に今の物差しをあてはめても、仕方がありません。
事実、そうしたハンディ・キャップを乗り越えて読みつがれている本には――
今の時代のベスト・セラーにはない読み応えの素がつまっているはずです。
ワープロ・ソフトのなかった時代に書かれた本を読むときには、そうしたことへの配慮も必要です。