なじみのお店にいって用事を済ませ、清算をお願いし、
「1305円です」
といわれたので、5000円札1枚と10円玉1枚を出したのですが――
そんなふうに自分で出しておきながら、
(あれ? おつり、いくらになるのかな?)
と考え込んでしまいました。
10円玉を出したのは、もちろん、おつりの硬貨の数を減らしたかったからですよ。
5000円札だけでは、とんでもない量の硬貨が戻ってきてしまいますからね。
が――
具体的にいくら戻ってくるのかが、とっさに計算できないでいたのです。
いつもなら、すぐに計算できるのですが――
きょうは、ぼうっとしていたのか、ぜんぜんダメでした。
そうしたら、お店の人が一見、不可解なことをおっしゃいまして――
「では、まず5000円札のおつり、2700円――そして、10円のおつり、5円――」
とおっしゃるのですね。
もう20年くらい顔を付き合わせている老婦人です。
20年くらい前に、すでに50代くらいにはみえましたから、今は70歳は軽く越えておられるでしょう。
そういう老婦人に、そんなふうにいわれたので、
(え?)
と思ったのです。
(この人は、何をいってるんだろう?)
と――
「いま、どうやって計算されたの?」
と訊いてみました。
そうしたら、笑って、
「あたしは、そろばんしかできないから……」
といって、種明かしをしてくださりました。
なんていうことはない、
5010 - 1305
=(5000 + 10)-(1300 + 5)
=(5000 - 1300)+(10 - 5)
= 2700 + 5
と計算されていたのですね。
そろばんを習ったことのある人なら、きっと、なじみのある計算なのでしょう。
そういえば――
僕も、算数の授業で、こんな計算の仕方を「そろばんの発想」として教わった記憶があります。
スマートな計算です。
とてもわかりやすい――
今後、おつりの計算は、
(こんなふうにしたい)
と思いました。