農村の風景が綺麗なのは――
自然の混沌と人間の秩序とが調和を保っているからでしょう。
絶妙なバランスだと感じます。
あの風景が――
もう少し「人間の秩序」側に傾けば、宮殿の庭園になるでしょうし――
もう少し「自然の混沌」側に傾けば、原生の大地になるでしょう。
もちろん――
庭園も大地も、どちらも綺麗なのですが――
農村の風景は、これらとは質的に異なる美しさをもっていると思うのです。
「質的に異なる」とは、どういうことか。
例えば、音楽における和音の美しさを思えば、わかりやすいでしょうか。
一音をどんなに美しく奏でても、和音の美しさには至らない――
その美しさは、一音の美しさとは、明らかに異質です。