物事は――
単純に見ようと思えば、いくらでも単純に見え――
複雑に見ようと思えば、いくらでも複雑に見えるものです。
単純か複雑かは、物事の真理とは関係がなく――
ただ、その物事を見ようとする者の意志にかかっているといってよいでしょう。
それゆえに――
人は、物事の自在な見方をこそ、身につけなければならないのです。
物事を単純に見る見方と――
物事を複雑に見る見方と――
双方の見方を自在に切り替えられるようになったとき――
人は、物事の見方を真の意味で習得したといってよいでしょう。
どちらか一方だけのうちは、物事の真理は、なかなか見えてこないものです。
この世界には――
単純な真理があれば、複雑な真理もあるのです。
さらにいえば――
「単純さ」とか「複雑さ」とかいう概念は、突き詰めて考えれば、人が勝手に作りあげた主観的尺度に過ぎません。
この尺度にとらわれているうちは、たぶん真理を巧くつかめないのです。