――映像は頼りない。
という話をきいて――
すぐに、
(え? うそ?)
と訝りました。
僕は日頃、言葉だけで何かを表現しようと躍起になっている立場なので――
映像による発信には、言葉だけによる発信と比べ、すさまじい威力がある――力強いメッセージ性がある――と思っていたからです。
ところが――
実際には、そんなでもない、というのです。
本当に力強いメッセージを放っているのは、映像それ自体ではなく――
その映像に被(かぶ)せられた言葉であったり音であったりする、と――
それで、
(あ、たしかに……)
と思い当りました。
いわれてみれば――
TVや映画では、たいていは言葉や音が映像とセットになっていますよね。
映像だけのTV番組や映画作品は、かなり珍しい――
言葉や音の被さっていない映像というのは、それが何を表しているのか、ちょっとみただけではわかりづらいからです。
つまり――
映像による発信に「すさまじい威力」があると感じるのは、ほとんど錯覚の域であって――
本当に「すさまじい威力」があるのは、実際には、映像と言葉と音との組み合わせである、と――
わかっていたようで、わかっていないことでした。
「映像は頼りない」という話に出会わなければ――
今でも、よくわかっていなかったことでしょう。