いわゆる過失には――
最善を尽くしての過失と「最善を尽くしての……」とはいえない過失とがあります。
「最善を尽くしての……」とはいえない過失というのは――
多くは、怠慢とか不注意とか志の低さが引き起こす過失です。
こういう過失は、周囲の人たちの心理に悪い影響を与えます。
ですから――
できれば自分ではやりたくないし、他人がするのもみたくはないのですが――
でも、そうはいっていられないのですよね。
人なら誰しも、ふと気を抜いたときにやってしまう過失であり――
人の世で暮らしていれば、ときに必ず目にする過失なのです。
そういう過失をしてしまったときに――
あるいは、自分の目の前で、されてしまったときに――
どのように振る舞うのがよいのか――
これが、意外に難しい――
一見よさそうなのは、そうした過失はなかったこととして振る舞うことです。
これは、過失を犯した本人が過失を犯したと気づいているときには有効なのですね。
ところが、気付いていないときには、どうしようもない――
たぶん、本人は、その後も同じ過失を繰り返すでしょう。
では、そうした過失があった事実を本人と深く共有すればよいのかいえば――
それも諸刃の剣なのですね。
というのは――
その過失の性質上――つまり、「最善を尽くしての……」とはいえない過失の性質上――どうしても、過失を犯した本人は、
――人格攻撃を受けた。
と錯覚しやすいからです。
なかなか妙案は浮かびません。