恨みに思う人を赦すということは――
第一には、その“恨み”を忘れることです。
が――
恨みは、そう簡単には消せません。
いつまでもいつまでも消え残って――
心の奥底に沈殿していくものです。
もし恨みが永久に消えないのならば――
恨みに思う人を許すということは、恨みに思う自分自身の心を誤魔化すことです。
痛いのを「痛くない」と誤魔化すように――
熱いのを「熱くない」と誤魔化すように――
あるいは――
苦しいのを「苦しくない」と誤魔化すように――
苛立つのを「苛立たない」と誤魔化すように――
不快なのを「不快でない」と誤魔化すように――
どだい無理な話なのです、そんなことは――人である以上は――
でも――
人は、そうやって人を赦していくしかないのですよね。
人の世で、まずまず幸せに暮らしていくには――
そうするより仕方がないのです。