何十年も残る歌と――
そうでない歌とがありますね。
1年ともたない歌も、決して少なくはない――むしろ、ほとんどの歌が、そうです。
その違いは何なのか――
ということを考えたときに――
当然ながら、以下の2つの基準:
1)確固たる創造性や固有性があるか
2)多くの聴者に心地よい感覚をもたらすか
が浮かび上がります。
いくら独創的で個性的であっても、人々に好まれ、愛されなけば、人々の記憶には残りませんし――
いくら人々に好まれ、愛されても、独創的ないし個性的でなければ、やはり人々の記憶には残りません。
この2つを兼ね備えることは、意外に稀でして――
例えば、
(あ、この歌は兼ね備えてるかな……)
と思えても、1年後には誰も口ずさんでいなかったり――
ということが、よくあります。
自然なことかもしれません。
一般に――
創造性や固有性が確固たるものであれば、それだけ多くの聴者を遠ざけるものですし――
多くの聴者に心地よい感覚をもたらすのであれば、それだけ創造性や固有性に乏しい(過去のヒット曲と類似している)ものですので――
何十年も残ることを狙って歌を作るのは――
的の真ん中を狙うこととは違うのです。
むしろ、的の真ん中の周辺を狙う――
例えば、半径1メートルの円形の的があったとして――
その真ん中に半径10ミリメートルの円形の印が描かれてあったとしたら――
狙うべきは、その10ミリメートルの円の中心ではなくて、その周辺――
例えば、10ミリメートルの円周の内外――
例えば、同心の11ミリメートルの円から9ミリメートルの円を取り除いた部分――
ということになります。
これは――
おそらくは、歌作りに限ったことではないでしょう。