午前8時と午前10時とでは――
街ゆく人々の顔つきが違うことに気づきます。
午前8時だと――
皆さん、一様に生気のない顔をされている――
例えば、スーツ姿で通勤途中の人たちは、
――ああ~、また、きょうも1日が始まるのか~。
みたいな気だるい表情――
あるいは、気持ちを内に秘めた穏やかな表情――
ところが――
その後2時間も経てば――
皆さん、個性豊かに生気が漲(みなぎ)っている――
例えば、仕事着で走り回っている人たちは、
――はい、そこ、どけて! 今、忙しいの!
みたいな気色ばんだ表情――
あるいは、働く喜びを噛みしめている表情――
要するに――
働く人たちにとって、午前8時は――
すでに1日が始まっているようでいて、実は、まだ始まっていないのです。
が――
午前10時には始まっている――
その境目はどこか――
おそらくは――
単なる職場の始業時間とかではなくて――
始業時間が過ぎて体や心にスイッチが入る時刻――午前8時半とか9時すぎとか――でしょう。
大切なことは――
働く人たちにとって、1日とは、始まるものではなく、始めるものであるということ――
自分で自分の体や心にスイッチを入れない限りは――
1日は決して始まりはしないのです。