自分が、とっくの昔に捨て去った命題を信じている人がいると、
(なぜ?)
と、つい訝ってしまうのですが――
でも――
その命題を信じていた頃の自分を思い出すと、
(まあ、仕方がないか)
と思うのです。
(あの頃は、自分だって信じていたからな……)
と――
(あの頃の僕にも、それは、たしかに疑いようのない真実だったからな)
と――
(どうしようもないな~)
という絶望感だけが残ってしまうのですね。
過去の自分と決別するか――
過去の自分を侮辱するか――
それらを選ぶよりは、まだ絶望しているほうが、いくらかマシなのです。