マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

鋼鉄の貴婦人

 イギリスのサッチャー元首相が87歳で亡くなったというニュースを知って――
 また、自分の少年時代が遠ざかったように感じました。

 というのは――
 1973年生まれの僕にとっては、最初のイギリスの首相が、

 ――マーガレット・サッチャー

 であったからです。
 もちろん、「最初の」というのは、

 ――何となく物心がついたあとで、少しは国際政治のこともわかりはじめた頃の――

 くらいの意味ですよ。

 ところで――

      *

 サッチャー元首相・死去のニュースに関わることで、はからずも深く感じ入ってしまったことは――
 このニュースをイギリス国民の半分は歓迎したらしいということでした。

「歓迎」というのは――
 例えば、ネットの書き込みなどで「(サッチャー元首相の亡くなった)今日は人生で最良の日だった」といったコメントが数多くみられる――
 ということを指します。

 もちろん、残りの半分の人たちは、ふつうに故人へ敬意を表し、生前の業績をたたえ、謹んで哀悼の意を表しているわけですが――
 そうでない人たちもいる、と――
 しかも、それは決して少数派ではない、と――

 それが――
 僕には、かなり新鮮な事実だったのですね。

 少なくとも、

 ――イギリスの首相は、だ~れだ?

 ――マーガレット・サッチャー

 で無邪気に覚えた少年時代の僕には――
 思いもよらぬ事実でした。

 自国の民から強く愛され、かつ激しく憎まれた政治家――
 それが、マーガレット・サッチャーであったのですね。

 ――Iron Lady(鋼鉄の貴婦人)

 という異名は、じつに的を射ています。

 ちなみに、この「Iron Lady」――「鉄の女」と訳されることが多いのですが――
 英語の「lady」には女性への敬意が含まれていることを重くみれば――
 誤訳とみるべきでしょう。

「鋼鉄の貴婦人」が奇異であるのなら――
 せめて、

 ――鉄の女性

 と訳すのが妥当であったと感じます。

 にもかかわらず、「鉄の女」が定着した理由は――
 文字数が「鉄の女性」よりも1つ少なかったからなのでしょうね。
 報道媒体では、文字数の少ないほうが、つねに重宝されるそうですから――