完全無欠の完璧な芸は――
かえって味気ないのかもしれません。
完璧な芸よりは――
むしろ「ほぼ完璧な芸」のほうがよい――
そうした芸の中に潜む欠陥が、かえって抒情を高めうる――
そうした可能性を――
僕らは、もう少し考えてもよいでしょう。
何といっても――
芸は人の行うことなので――
これに対し――
学(学問)は、やはり完全無欠の完璧がよいでしょう。
完璧の学よりも「ほぼ完璧の学」のほうが、かえって抒情が高まりうる……なんてことを考える人は――
おそらくは、いない――
学とて人が行うことですが――
そこで期待されることは、決して人らしさではないのです。
この点が芸との決定的な差異といってよいでしょう。
もちろん――
完全無欠の完璧な学などは、多分この世に存在しえないでしょうが――