自分が本音をいうから、相手も本音をいうし――
相手が本音をいうから、自分も本音をいうのですよね。
相手が本音をいわなければ、自分から本音をいう気にはなりません。
自分が本音をいわなければ、きっと相手も本音はいわないでしょう。
それが人世の機微というものです。
ときどき――
建前をいっている相手に本音をぶつけている人をみかけます。
あるいは――
本音をいっている相手に建前をかぶせている人をみかけます。
本音と建前との正面対立――
これほど不毛なコミュニケーション遅滞はないといってもよいでしょう。
人の世で楽しく暮らそうと思ったら――
決してやるべきことではないのですよね。
が――
かくいう僕も、ときどき、そういうことをします。
無意識にやってしまうときと意識してやるときとがあります。
無意識にやってしまうのは、ただの不可抗力ですから――あとで相手の人に対して、
(申し訳なかったな)
とは思いますが――
とくに他意はありません。
意識してやるときというのは――それは、決して不可抗力ではありませんから――
もちろん、他意があります。
それは、
――あなたとは深く関わりたくない。
と暗示したいときですね。
そんな暗示は、できる限り、かけたくはないのですが――
ときどきガマンできなくなるときがあります。