社会に向かって物語を提示する目的は――
物語の受け手に何らかの情動や感覚を呼び起こすことです。
そのような意味で、すべての物語は煽情的であるといってよいでしょう。
煽情的である物語を見せるには、常に、
――見せ方
を意識する必要があります。
社会に向かって物語を提示することも、当然のことながら、社会行為の一つです。
社会行為には、多かれ少なかれ、倫理規制が求められます。
倫理規制は、社会が安定を維持するためには、どうしても必要なのです。
よって――
物語を提示するには、高い技術が求められます。
倫理規制を満たした上で、それでも煽情的に見せる技術です。
倫理規制を満たしすぎれば、煽情的には見せられないでしょう。
かといって、倫理規制を満たさなければ、いたずらに社会を動揺させ、ひいては自身が道義的批判の的になるだけです。
その折り合いをつけるセンスを磨かない限り――
物語を煽情的に見せるのは、避けた方が無難でしょう。