マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

白黒映像の誤解

 近代の白黒映像をデジタル化し、精密な時代考証を元に色を着けるという試みが――
 フランスの番組制作会社を中心に行われているそうです。
 
 その会社とNHKとが協力し――
 大正や昭和前期の東京の白黒映像にも色が着けられている、とか――
 
 その映像をチラッとみて思ったのは――
 
(間違いなく「白黒映像の誤解」というものがあるな)
 ということでした。
 
 白黒映像は、当たり前ですが、オリジナルには色が着いていたわけです。
 オリジナルというのは、その白黒映像で写されている風景や人物・静物のことです。
 
 ところが――
 オリジナルを知らない者が、その白黒映像だけを繰り返しみていると――
 あたかも、オリジナルには色がなかったかのように錯覚をする――
 
 少なくとも子供の頃の僕は、錯覚をしていました。
 大正や昭和前期の東京の街並みには色がなかったと、本気で誤解していましたよ。
 
 おそらく――
 物心がついた頃からカラー映像と白黒映像とを見比べてきた弊害でしょう。
 
 1973年生まれの僕は――
 物心がついた頃には、
 
   カラー映像 : 今のこと
   白黒映像 : ちょっと昔のこと
 
 というレッテルを貼っていました。
 
 そして――
 そのレッテルを無意識に拡張させて、
 
   今のこと : 色が着いている
   ちょっと昔のこと : 色が着いていない
 
 と誤解していたのです。
 
 その誤解は、
「昔は色がなかったの?」
 と母親に訊き、
「色はあったけど、映像には残ってないのよ」
 と繰り返し説明を受けても――
 とけることはありませんでした。
 
 色の着けられた大正・昭和の白黒映像をみて初めて――
 僕は、子供時代の自分の誤解を明瞭に意識することができました。