マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

虚構に現実を意図的に紛れ込ませる俳優がいるとすれば

 現実に紛れ込んだ虚構は目立ちますが――
 
 虚構に紛れ込んだ現実は――
 もっと目立ちますね。
 
 現実に紛れ込んだ虚構というのは――
 要するに、その場しのぎの誤魔化しや取り繕いのウソのことです。
 
 これは、目立つ――
 
 見る人が見たら、すぐに直観で見抜きます。
 
 ――あ。今のはウソだ。誤魔化してる。
 
 と――
 
 これに対し――
 虚構に紛れ込んだ現実とは――
 例えば――
 優れた俳優が本人の意図せぬ形で見せる迫真の演技であり――
 
 それは――
 もはや、「演技」ではなくて、ただの「行為」です。
 
 ちょっとした仕草とか、わずかな目元・口元の動きとか――
 
 これも、案外、目立ちます。
 
 見る人が見たら、すぐに直観で見抜く――
 
 ――あ。今のはホントだ。演技じゃない。
 
 と――
 
 これを、意図せぬ形ではなくて、意図した形で見せる俳優がいるとすれば――
 
 それは――
 間違いなく、名優です。
 
 虚構に現実を意図的に紛れ込ませるなど――
 常人の技であろうはずがない――
 
 今月10日に亡くなった高倉健さんは――
 おそらく、そういう名優のお一人でした。