マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

名医からの学び方

 僕は、大学時代は医学を専攻していて――
 医師になるための教育を受けていたのですが――

 その頃に――
 中堅の医師から教わったことが忘れられません。

 曰く、

 ――「この医者はスゴい!」と思ったら、できるだけその医者の周りにいて、学べることは何でも学べ。ただし、その医者から最も多くのことが学べるのは、その医者が失敗をしたときだということを、忘れるな。

 というものです。

「最も多くのことが学べるのは、その医者が失敗をしたとき」というのは――
 実に意外な言葉でした。

 なぜ“失敗をしたとき”に“最も多くのことが学べる”のか――

 それは、

 ――その医者が失敗をしたときに、その失敗をどうやって取り戻すのかをよく見ておくんだ。

 ということです。

 失敗をしない医者はいません。
 どんな名医でも失敗はします。

 が――
 名医は、取り返しのつかない失敗をしません。

 そして――
 その失敗で被った損害を、必ずや、多少なりとも取り返します。

 ――その取り返し方をよく見ておくんだ。

 ということなのです。

 さらに、

 ――その医者の失敗が、なぜ“取り返しのつかない失敗”にならずに済んだのかを、じっくり考えろ。考えてわからなければ、その医者に訊け。必ず教えてくれるから――

 ともいわれました。

 まさに、

 ――名医からの学び方

 の極意といってよいでしょう。

     *

 以上の話は――
 昨年の5月に僕が監修を担当させて頂いた書籍『失敗が教えてくれること』(竹内薫著、総合法令出版)の内容に直に盛り込もうと思っていた話なのですが――

 結局――
 話題の種類や構成の都合で、直には盛り込めませんでした。

 ただし――
 この話の基本となる発想は、まずまず盛り込めたのではないかと、思っております。