マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「リベラル・アーツは実学だ」という主張

 ――リベラル・アーツは実学だ。

 といわれて――

(え?)
 と戸惑い――

 その後――
 ネットで少し調べて考え込んだら――

(あ。そういうことか)
 と納得しました。

     *

 ――リベラル・アーツ(liberal arts

 とは、中世ヨーロッパの大学で確立された実践的技芸の基本のことです。

 ――自由七科

 ともいわれます。

 具体的には――
 文法学、修辞学、論理学、算術、幾何、天文学、音楽の7つの科目ですね。

 これら7つの科目は、人が世の中を自由に生きていく上で必須の技芸と考えられていました。

 ところが――
 20世紀以降は、ヨーロッパに限らず、「リベラル・アーツ」といえば、もっぱら大学教育の教養科目を指すようになりました。

 それで――
 少し話がややこしくなってきます。

 教養科目というのは――
 いわゆる人文科学、社会科学、自然科学の基礎分野に相当します――言語学とか倫理学とか地理学とか歴史学とか物理学とか生物学とか――

 これら教養科目は、専門科目――例えば、教育学とか経営学とか畜産学といった専門性の高い科目――とは明確に区別されるのが普通です。

 専門科目のほとんどは実学です。

 教養科目は、これら専門科目と対比されることが多いものですから――
 しぜん実学とは相容れない科目が教養科目であると、みなされやすくなります。

 よって、

 ――リベラル・アーツは実学だ。

 という主張が――
 ひどく異彩を放っているように感じられるのですね。

 が――
 それは見かけ上の異彩です。

 実際には――
 専門科目であろうと、教養科目であろうと――
 実学でない科目というのが、珍しいのです。

 専門科目のほとんどが実学であるように――
 教養科目のほとんども、実は、実学であるのですね。

 言語学倫理学も地理学も歴史学も物理学も生物学も――
 本来、僕らの生活が根差しているところまで知見を掘り下げていくべき学問なのです。

 僕らの生活から乖離した抽象論で終わらせてもよい学問ではないのですね。

 ですから、

 ――リベラル・アーツは実学だ。

 という主張は、ごく当然であって――

 その主張に戸惑ってしまった僕は――
 リベラル・アーツのことはもちろん、教養科目のことも、実は、よくわかっていなかった――
 ということになります。