世の中で難しいことの一つに、
――偶然に起こった出来事を、“たしかに偶然だ”と断じること
が挙げられると思います。
例えば――
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地方都市では、よくあることですが――
毎朝、通勤時に同じ電車・同じ車両に乗り合わせている人がいたとして――
その人とは、毎朝ただ顔を合わせているだけで、とくに知り合いでもなんでもないとします。
そして、ある休日の朝に――
その人と同じ電車・同じ車両に乗り合わせたとします。
このとき――
この出来事を“たしかに偶然だ”と断じることは――
実は、それほど容易ではありません。
毎朝、同じ電車・同じ車両に乗り合わせているわけですから――
その人と自分とは、生活のリズムが似ているのかもしれない――
休日の生活のリズムも似ているものだから、同じ電車・同じ車両に乗り合わせただけなのかもしれない――
もちろん――
例えば、たまたま自分が前日に隣町へ引っ越していて、いつもとは違う駅から乗っていたにも関わらず――
同じ電車・同じ車両に乗り合わせたのだとしたら――
それを“たしかに偶然だ”と断じることは、難しくはないでしょう。
が――
引っ越しをしたのが自分ではなくて、先方であれば――
どうでしょうか。
おそらく、それを“たしかに偶然だ”と断じることは、不可能でしょう。
仮に、先方が引っ越しをしたとわかっていたにせよ――
それを“たしかに偶然だ”と断じることは困難です。
少なくとも、つい最近まで、お互いよく似た生活リズムで暮らしていたわけですから――
そこに何の因果関係もなかったと主張するほうが不自然です。
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このように、
――そこに何の因果関係もなかった。
と結論づけることは、
――何らかの因果関係があった。
と結論づけることよりも――
少なからず大変なのです。