学者が――
自分の知的好奇心のみによって学究を継続できる学問は――
大変に素晴らしいと思っております。
(学問とは、本来かくあるべき)
と――
僕は固く信じております。
実社会の役に立つ学問は、何か他の種類の営み――例えば、産業とか、経済とか、政治とか、医療とか、福祉とか――の一部であって――
本来の学問ではない、と――
僕は、大学時代に医学を専攻し――
今も医学に深く関わる仕事――つまり、医療――に携わっておりますが。
――今日、医学は、もはや医療の一部になった。
といってよいと考えております。
僕が中学生だった30年ほど前までは――
などといわれていました。
が――
その後、
――生命科学
とか、
――医学生物学
とかいった言葉が定着し始めて――
人の体の仕組みを自然科学的に解明する諸分野は、医学から独立したり、他の学問に吸収されたりしています。
今日、医学に残っている分野は全て、医療の一部――あるいは、医療を下支えしている学問――といってよいでしょう。
iPS細胞を生み出した再生医学などは、その典型といえます。
おそらく、世間から幅広く忌避され、ときに激しく嫌悪されえます。
……
……
こんなことを述べていると、
――マル太は「再生医学は本来の学問ではない」といっている。けしからん!
と、ご叱責を受けるかもしれませんが――
たしかに、まあ……そういっておるのでありますが――
だからといって――
再生医学が人類に多大な福音をもたらしうることは十分に理解しておるつもりです。
――再生医学は本来の学問ではない。
と、たしかに僕は思っておりますが、
――再生医学が、人類の営みの1つとして、超一級の価値を持っていることは間違いない。
とも思っております。
要するに――
医学は医療を離れてはやっていけない――
医学は学問の本来の在り方を忘れないと発展しえない――
そういうことが、主張したいのです。