会社をもうけさせる社長は、社員につらくあたり――
社員に温かく接する社長は、会社をもうけさせない――
そういった主旨の話が――
昨今、アメリカなどで――
まことしやかに、ささやかれています。
いま「まことしやかに」と述べましたが――
この話――
実は、かなり強い説得力を感じさせるのですよね。
僕自身も、
(たぶん、その通りだろう)
と――
何となく思ってしまっています。
が――
ちょっと待ってほしいのです。
なぜ僕は、この話に強い説得力を感じてしまうのか――
それは――
ひょっとすると――
僕自身の平凡で小市民的な願望に由来しているではないか――
そう思うことがあります。
会社をもうけさせ、かつ社員に温かく接する社長――そんなスーパーマンみたいな社長が、この世に、もし実在していたら――
僕ら凡人は、ただひたすらに恐れ入ってしまって、何もできなくなってしまう――何もいえなくなってしまう――
そんな惨めな思いをしないで済むように、
――会社をもうけさせて、かつ社員に温かく接する社長なんて、実在しないよ。必ず、どちらかを犠牲にしているものさ。
と思い込もうとしている――
そう思い込むことで、心の安寧を手に入れようとしている――
そういう仮説は成り立たないであろうか、と――
ふと自問することがあります。
(とくに「成り立たない」ということはないな)
と――
今の僕は感じています。