歴史や伝統が実際にはないのに――
さも、あるかのように見せかけたり、うそぶいたりするのは、
(カッコ悪いことだ)
と思っています。
少なくとも年配の人たちにとっては――
見苦しく、聞き苦しいことでしょう。
とはいえ――
10代や20代の頃は――
そういうことを、ついやってしまいがちです。
――2年の“歴史”がある。
などと安易にいってしまう――たった“2年”なのに……。
仕方のないことです。
10代や20代では――
10年や20年はもとより、1年や2年でさえ、けっこう長く感じられるものです。
歳をとるにつれて――
10年や20年が、だんだん短く感じられるようになる――
30代や40代では――
“10年の重み”ではなくて――
“10年の軽み”を痛感するようになる――
――もう10年が経ってしまったのか!
と――
そして――
50代や60代では――
人の一生でさえ、“軽く”感じられるようになるといいます。
――人の一生は、なんと儚いものか。
と――
歴史や伝統は――
人の一生分の時間が幾重にも連なって醸成されていきます。
そのことを――
人は早くから頭では理解しますが――
真に実感するのは――
“10年の軽み”が痛いほどわかるようになってからでしょう。