小説作品への評価は難しい――
と感じます。
とくに、純粋に作品だけを評することが難しい――
第1に、どういう立場で下す評価なのかを――
把握する必要があります。
虚構の意図や構造を敷衍する立場からの評価なのか――
文芸の実践を十分に経験した立場からの評価なのか――
です。
第2に、作品への評価の中に作者への評価が混じっていないかどうかを――
吟味する必要があります。
作者の経歴などが不詳であっても、作品の評価は変わらないのか――
まったくの別人が作者であっても、作品の評価は変わらないのか――
です。
本当は――
こんなことをゴチャゴチャと考えずに、
――面白そうだったから、読んでみた。読んでみたら面白かったから、良かった。こういうのは好きだ。
とか、
――ぜんぜん面白そうになかったから、手に取らなかった。こういうのは、ハッキリいって、どうでもいい。
とかいったような感慨が――
小説作品への評価の――少なくとも読者としての評価の――すべてではないでしょうか。
もちろん――
思想家としての評価や小説家としての評価、あるいは編集者としての評価というのは――
あります。
が――
それらの評価は、小説作品への評価というよりは、作品と作者との関係性への評価であって――
新たなる思想活動や小説執筆、編集業務に資するような評価です。
純粋に作品を評したものとはいえません。