子どもの頃に、少壮の役柄でハツラツとした演技をみせていらした俳優さんが――
今になって、お年寄りの役柄で渋く重みのある演技をみせていらっしゃると――
(うわ~、この人、歳をとったな~)
と、驚嘆する一方――
(そのぶん僕も歳をとったんだよな)
との思いを新たにします。
近年では――
鬼籍に入られる方も、決して少なくなく――
あらためて人の世の儚さに感じ入ります。
ところで――
……
……
僕が子どもであった頃に――
お年寄りの役柄を演じていらした俳優さんをみて――
当時の僕は、
(この人は、昔から、こんなだったに違いない)
と勝手に思い込んでおりましたが――
母が――
その同じ俳優さんをみて、
「あらま~、この人、ずいぶん歳をとったわね~」
と、嘆息することが――
よくありました。
当然ながら――
母には、その俳優さんの少壮の頃の記憶が(今の僕と同じように)鮮明に蘇っていたのでしょうが――
当時の僕には――
それがわかりません。
(何をいってんだか……)
と――
素知らぬふうを装っておりました。
……
……
歳月による世代の分断というのは――
少なくとも、こうした追憶については――
そう簡単には――
架け渡せないものでしょう。
それを否定的に捉えるつもりはありません。
それは、それで――
よいと思うのです。