――何回も病気になると体重が増える。
という話を――
お年寄りからききました。
――体重が増えたので、減らそうと思ってダイエットを始めたら、十分に減りきる前に風邪をひいた。仕方がなく、きちんと栄養をとろうと思ってダイエットを終わらせたら、また体重が増えた。この繰り返しで、いつの間にか体重が階段状に増えていった。困ったことだ。
と――
「よかったじゃないですか」
と、僕がいうと――
「え?」
と、怪訝な顔をされました。
なので、
「まだまだお迎えは遠いということですよ」
というと――
それでも――
まだ怪訝な顔をされました。
たしかに――
もっともな話です。
……
……
そのお年寄りは――
おそらくは、ダイエットの仕方に無理があって――
栄養に偏りが出て、免疫の働きが落ち――
風邪のウイルスに対する抵抗力が弱くなったのでしょう。
が――
病気で体重が増えるというのは、
――まだまだ、体は元気だ。生命力で溢れている。
ということです。
ふつうは――
病気になると、食べられなくなります。
とくにお年寄りで、不治の病などが悪化すると――
本当に、何も喉を通らなくなります。
無理に通そうとすると、むせこんで苦しむことになるので――
やがて、何も食べようとしなくなるのですね。
みるみるうちに痩せていく――
そうして――
やがて、お迎えが来ます。
つまり――
病気で体重が増えるということは、
――お迎えの来る気配は微塵もない。
ということです。
以上のことをきちんと説明すると――
そのお年寄りは、
――それはそれで、困ったことだ。
と、笑っておっしゃいます。
「そろそろお迎えにも来てほしいもんだわ。早くあの世で楽になりたい」
と――
……
……
それは、また別の問題ですね。