――数字を追うな。仕事を追え。
と――
ビジネスの世界では、よくいわれます。
ここでいう「数字を追うな」とは、
――ビジネスの収益を少しでも増やすために汲々としてはならない。
であり、「仕事を追え」とは、
――ビジネスの状況を少しでも良くするべく努力は怠るな。
です。
よって、「数字を追うな。仕事を追え」の戒めは、実は、
――現実に対応した真っ当なビジネスをやれ。
といっているに等しく――
きわめて当然の戒めといえるのですが――
……
……
この戒めを――
もう少し厳密な表現に改めますと、
――抽象的な記号を追うな。具体的な状況を追え。
となります。
いかなるビジネスにも、具体的な状況があります。
その状況の一部が抽象化され、数値化され、記号化されたものが、収益です。
収益とは、しょせんは記号に過ぎません。
いかなるビジネスにおいても――
たった一つの記号から具体的な状況を把握しきれるほどに単純で単調であるわけではありません。
よって――
収益をみて状況をみなければ、ビジネスを見誤るのは明らかです。
喩えるなら――
ある日の天候の移ろいを、その日の平均気温だけで判断するに等しいといえます。