人の体力は――
年齢を重ねるごとに衰えるものですが――
衰えるのは体力だけではありませんよね。
気力も衰えます。
気力の衰えとは――
具体的には――
他者への配慮ができなくなったり――
感情や雰囲気に流されやすくなったり――
気の利いたことがいえなくなったり――
自分の頭で一から考えられなくなったり――
……
……
体力の衰えに備えて人生設計を見直すという話は、よく耳にします。
が――
気力の衰えに備えて人生設計を見直すという話は、あまり耳にしません。
むしろ――
人の気力は、年齢を重ねれば重ねるほどに充実するものである、という話を――
しばしば耳にします。
少なくとも――
この国の政官界や経済界では――
気力の充実が求められる重要な地位や役職に就くのは年齢を重ねてからのほうがよい、と――
考えている人たちが少なくありません。
……
……
たしかに――
一理あるとは思います。
というのは――
年齢を重ねると――
知恵がつく――
これは間違いないでしょう。
そして――
その知恵が気力の衰えをすっかり補ってしまう――
そういうことは――
きっとあるでしょう。
……
……
が――
それでも、僕は――
人の気力は年齢を重ねるごとに衰えていくことを前提にするのがよい、と――
思っています。
そのほうが――
知恵の発揮の仕方を間違える危険性を減らすことができる、と――
……
……
知恵の発揮の仕方を間違えるということが――
あるのですよ。
とくに年齢を順調に重ねてきた人にみられます。
年齢を重ねて知恵をつけたのはよいけれど――
気力が衰えていて――しかも、その自覚がないために――
せっかくの知恵を自己保身や身勝手の実践で発揮してしまっている――
そういう人が――
時々います。