理想と現実との板挟みにあって――
理想を尻目に、現実と奮闘をする人に向かって、
――なぜ理想を追わぬ?
と叱責をすることには――
危うさが潜みます。
そうやって奮闘をする人の姿勢を――
ただ理想を追わないという理由だけで――
例えば、理想には目もくれずに、ただ現実と格闘をしているだけの人を糺すのと同じように、
――けしからん!
と断罪をするのは――
ちょっと説得力を欠くでしょう。
たとえ尻目ではあっても、理想の方へ多少なりとも注意が向いているのであれば――
理想が無視されていることにはなりません。
理想が無視されていないのであれば――
いずれは、現実との奮闘の方法論が進化し、いつの日か、その方法論が何らかの成果をもたらすでしょう――たとえ、その日が遠い将来であったとしても――
ただし――
理想が確実に無視されていて――
しかも、その動機が当事者の保身によるのであれば――
それは、厳しく断罪されるのがよいと思います。
本質的なのは――
現実との奮闘の進捗が絶望的か否か――
また――
当事者の思惑に「保身」という名の私欲が混じっているか否か――
です。
この点を度外視した断罪は――
互いの感情的な反発をいたずらに招き合うという意味で――
大変に危ういのです。