人は、自分の死期が迫っていることを悟ると、より強く死後のことへ思いを馳せるようです。
ちょうど――
港の埠頭の先まで近づくと、より強く沖合の方へ思いを馳せたくなるように――
……
……
おとといの『道草日記』で触れた――
老随筆家の絶筆となったエッセイを――
きのう――
読み返してみました。
最初に読んだときは――
内容が、ほとんど頭に入ってこなかったのですが――
今度は――
しっかりと頭に入ってきました。
最初に読んだときに読みとった通り――
そのエッセイは、ほぼ全文を通して、過去のことが書かれていたのですが――
ごくわずかだけ――
未来のことも書かれてあって、
(なるほど……)
と思いました。
(本当に述べたかったことは、これだったか)
と――
本当に、ごくわずかでした。
字数の割合にして――
たぶん1%もなかったのではないでしょうか。
が――
その1%足らずのために、残りの99%余りがある――
そういうエッセイでした。
そんな構造のエッセイは――
自分の死期が迫っていることを悟らない限りは――
なかなか書けないでしょう。
絶筆の凄みを感じました。