終戦記念日を迎えるに当たって――
僕らは、
――体験に勝る教訓はない。
との格言を――
いま一度、重く受け止め直すのがよい、と――
感じています。
この格言が諭すところは――
おそらくは、「体験さえしていれば十分で、例えば学問などは必要でない」ということではありません。
そうではなくて、
――体験で得られる教訓が、体験以外でも――例えば学問などでも――得られるとは、決して期待してはならない。
ということです。
このことは、
――体験で得られる教訓は、世代を越えて受け継がれることがない。
ということを意味しています。
太平洋戦争(大東亜戦争)の終戦から72年が経ちました。
当時、この国の命運を担っていた世代が体験から得た教訓を――そして、その体験からしか得られなかった教訓を――
僕らは、おそらくは何一つ得ていません。
このことは――
太平洋戦争(大東亜戦争)の惨禍を二度と繰り返さないためには――
ぜひとも前提に据えておく必要があると感じます。
当時の世代が痛烈な体験から得た教訓が何であるのかを――
僕らは未だに知らないのです。
当時の世代が、
――そんなバカなことは、よせ!
と慌てて制したくなるような愚行が何であるのかを――
僕らは未だに知らないのです。
ですから――
僕らは、よほど想像力を豊かにして、できるだけ鋭く感性を磨き、多種多様の事実を確かめあげ、様々な角度で論理を自在に駆使しないかぎりは――
たぶん同じ過ちに踏み出すことでしょう。
当時の世代が、
――また同じことをやろうとしている……。
と呻(うめ)き嘆くような過ちに――