いわゆるポピュラー音楽の世界では、
――歌の技は声の質を上回れるか。
という問いがあって――
で――
その答えは――
一般に、
――否
とされています。
つまり、
――どんなに歌の技が優れていても、優れた声の質には敵わない。
ということです。
声の質というのは、多分に先天的ですから――
この答えは、
――ポピュラー音楽の世界では、先天的資質が後天的資質よりも重要だ。
との主張を暗示します。
……
……
実際のところ――
この主張を否定するのは、少なくとも経験則的には、とても大変だそうです。
声は良いけれど、大して歌の巧くない人が残り――
歌は巧いけれど、大して声の良くない人は消えていく――
そういう現実が――
ポピュラー音楽の世界には、あるそうです。
この現実を否定的にとらえる向きは――
必ずしも多くありません。
――トレーニングによって、歌は多少なりとも巧くなるが、声はほとんど良くならない。
というのが――
その理由です。
(まあ、そうなんだろうな)
と――
思います。
というよりも――
門外漢の僕には、
(そうとしか、いえないんだろうな)
と思います。
……
……
こうした風潮を知った上で――
例えば――
シンガーソングライターの方で――
他の唄い手に提供した作品の中には数多くのヒット・ナンバーがあるのに――
ご自身で唄う作品の中には、これといったヒット・ナンバーが見当たらない――
という話をきくと――
胸に鬼気迫るものを感じます。
そういう方は――
たいていは――
歌の技は高いのですよね――
当然です――ご自身で高い技を備えていなければ、ヒット・ナンバーの連発は容易ではありませんから――
声の質が――
万人受けしないのです。