ハンニバル・バルカの相手役として最も傑出しているのは――
おそらくは、
であることを――
きのうの『道草日記』で述べました。
その理由は――
ハンニバルの戦術家としての技量を誰よりも高く評価していたらしいことです。
そして――
ハンニバルのほうも――
たしかに――
その弟の首が自分の陣地に投げ込まれた経緯を考えれば――
複雑な思いを抱えたことは間違いないと思いますが――
一つ忘れてはならないことは――
という点です。
バスドルバルの軍を捕捉し、これを壊滅させたのは――
ローマ軍の別の武将でした。
そもそも――
大スキピオは、「首を投げ込む」といった過剰ともいえる示威行為をしそうにない人物です。
地元の有力者が大スキピオに、自身の娘を、
――妾に――
と献上します。
ところが――
その娘には婚約者がいて――
それに気づいた大スキピオは、一緒に献上された金銀財宝も添え、娘を送り返したそうです。
もちろん、
――妾に異民族の娘など、迷惑千万!
というのが本心であったかもしれませんが――
とにかく、本心はおくびにも出さず――
イベリア半島でのローマの盛名に傷がつかないよう、政治的に周到な配慮ができる資質を――
大スキピオは備えていました。
そういう人物であったからこそ――