――損して得とれ。
という言葉がありますね。
――たとえ、短期的には損をしても、中・長期的に得をするような方策が望ましい。
という意味です。
この言葉によれば――
十分に「損をする」とわかった上で損をするのは、そんなに危ういことではない――
ということになります。
むしろ――
将来的に得をする見込みが少しでもあるならば――
その損には、少なからず意義を見出せる――
ということです。
あるいは――
次のように考えることもできるでしょう。
自分が損をすれば、多くの場合、誰かが得をすることになる――
そうであれば――
自分が損をすることで、その誰かを喜ばせることができるかもしれない――
と――
……
……
この「損して得とれ」は、
――損して徳とれ。
とも書くそうです。
――得
と、
――徳
との違いですね。
たしかに――
誰かを喜ばせるなら――
それは、「徳」であるに違いありません。
ここで――
気になるのは――
……
……
十分に「得をする」とわかった上で得をすることの、危うさです。
自分が得をすれば、多くの場合、誰かが損をすることになる――
そうであれば――
自分が得をすれば、その誰かを悲しませることになるかもしれない――
そうともいえます。
……
……
誰かを悲しませるなら――
それは、「悪徳」であるかもしれません。
……
……
――損して得とれ。
の真意は――
案外――
この辺りにあるのではないでしょうか。
つまり、
――十分に「得をする」とわかった上で得をすることの危うさ
を指摘しているのではないか――
ということです。