マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

死と恋との共通点

 ――死

 と、

 ――恋

 とでは――
 決定的な違いが、少なくとも2つある――
 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 ――体験可能性の有無

 と、

 ――体験頻度の有無

 との2つです。

 が――

 違う点を指摘する前に――
 同じ点を指摘するべきでした。

 ――死

 と、

 ――恋

 とにみられる共通点とは――
 何でしょうか。

 ……

 ……

 それは、

 ――理想的に描かれやすく、かつ観念的に論じられやすい。

 という点です。

 ……

 ……

 ――なんのこっちゃ?

 と首をひねる方が大半であろうと思います。

 実は――
 この「理想的に描かれやすい」とか「観念的に論じられやすい」といった性質は――
 死や恋の周辺にある概念と比較することで、よくみえてきます。

 では――
 死や恋の周辺にある概念とは何か――

 ……

 ……

  恋 ≒ 生殖欲求

 の図式は――
 繰り返し述べてきました。

 生殖欲求――すなわち、恋――は――
 生物種としてのヒトが、種を存続させるために必要な本能です。

 一方――
 生物種としてのヒトが、個を存続させるために必要な本能は何かというと――
 それは、

 ――摂食欲求

 です。

 摂食欲求を一字で表すなら、

 ――餓

 です。

 つまり――
 恋の周辺にある概念とは、個の飢えです。

 さらにいえば――

 ……

 ……

 ――死

 とは――
 生物種であるヒトが、個の存続を停止させる事象です。

 では――
 生物種であるヒトが、種の存続を停止させる事象は何かといえば――
 それは、

 ――絶滅

 です。

 あえて一字で表せば、

 ――滅

 です。

 つまり――
 死の周辺にある概念とは、種の絶滅です。

 ……

 ……

 以上をまとめると、

            存続の本能 存続の停止
  個としてのヒト    餓       死
  種としてのヒト    恋       滅

 となります。

 ……

 ……

 こうして4つの概念を俯瞰したときに、

 ――餓

 や、

 ――滅

 と比べると、

 ――死

 や、

 ――恋

 が妙に理想化され、観念化されていることが――
 よくわかると思います。

 種の絶滅を、

 ――死

 のように思う人は少なく――
 また――
 個の飢えを、

 ――恋

 のように思う人も――
 そう多くはないでしょう。