マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

どちらの政治力も期待したから

 民主主義国家において――
 いわゆる政治力には、少なくとも2つあって――
 1つは、

 ――不特定多数の部外者から幅広く支持を集める力

 であり――
 もう1つは、

 ――特定少数の部内者から篤く信頼を取りつける力

 である――
 といわれています。

 ここでいう「不特定多数の部外者」とは、選挙の有権者のことであり、「特定少数の部内者」とは、仲間の政治家のことです。

 これら2つの政治力を兼ね備えることは――
 すべての民主主義国家の政治家にとっての理想でしょう。

 が――
 そのような政治家は、実際には、きわめて稀だと考えられます。

 不特定多数の部外者に訴える言動と特定少数の部内者に訴える言動とは異質だからです。

 よって――
 民主主義国家の政治家は、どちらの政治力を自分は拠りどころとするのかを――
 多少なりとも割り切って決めておく必要があるでしょう。

 一方――
 選挙の有権者は――
 政治家たちのその“割り切り”を冷静に許容し、受容する意志が必要です。

 ――街頭演説で喝采を浴びつつ、政治家たちを惹きつける政治家など、存在しない。

 と諦めるのですね。

 例えば――
 街頭演説で喝采を浴びる政治家に、政策調整の柔軟性は期待しない――
 政治家たちを惹きつける政治家に、画期的な世論形成は期待しない――
 と――

 ……

 ……

 有権者が、一人の政治家に、どちらの政治力も期待する態度は――
 たぶん、民主主義国家の政治制度を危うくします。

 そうした態度は――
 2016年のアメリカの大統領選挙で――
 多くの有権者によって示されたのではなかったか、と――
 僕は感じます。

 どちらの政治力も兼ね備えた政治家など――
 滅多に登場しません。

 それゆえに――
 政治家でない人物を、うっかり大統領に選んでしまった――

 ――政治家でない人物なら、どちらの政治力も兼ね備えているのかもしれない。

 と空想をして――

 ……

 ……

 報道によると――

 現在――
 アメリカの大統領府では――
 大統領の政治力の不足からくる独断専横を――
 政府高官たちが、自らの職務権限や政治生命を賭けて、懸命に防いでいるのだそうです――面従腹背を試みたり、決裁文書を抜きとったりしながら――

 ……

 ……

 報道が事実とすれば――
 実に危ういことです。

 滑稽を通り越して、峻烈です。

 あの国の政治制度が――
 こういう形で危うくなるとは――

 夢にも思っていませんでした。