マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

後鳥羽上皇のこと(1)

 世の中には――
 稀に、

 ――何でもできる人

 というのが――
 いるのですね。

 なぜか――
 自分が、

 ――やりたい!

 と思ったことは何でもできてしまう――
 そういう人のことです。

 ……

 ……

 もちろん――

 人である以上――
 全知全能ではありえませんから、

 ――何でもできる

 ということなど――
 実際には、ありえないわけですが――

 それでも――
 たまたま自分が「やりたい!」と思ったことが全てできてしまったという人は――
 この、

 ――何でもできる人

 に該当してしまうのです。

 ……

 ……

 こういう人には――
 恰好の落とし穴があります。

 ――できない人の気持ちがわからない。

 という「落とし穴」です。

 「やりたい!」と思ってもできない、ということが、どういうことか――

 「やりたい!」と思ったことができないとわかったときに――
 人は、どういう気持ちになるのか――

 それが、わからない――

 ……

 ……

 それが――
 わからなかったばかりに、

 ――うっかり命を落とす。

 ということも――
 十分にありえます。

 ……

 ……

 平安末期から鎌倉初期にかけて――
 京の朝廷に君臨をしていた後鳥羽上皇は――
 その好例といえます。

 実際には――
 命を落とすところまではいかなかったのですが――

 ほぼそれに等しい事態を自ら招き――

 以後、20年近くもの間、不遇をかこった挙句――
 還暦の頃になって、失意のうちに亡くなりました。

 ――再起不能の失敗で終わった人

 といってよいでしょう。

 ……

 ……

 後鳥羽上皇の生涯をたどるときに――
 いつも思うのです。

 ――この人が再起不能の失敗を回避するには、どうすればよかったのか。

 と――

 ……

 ……

 結論からいえば――

 その答えは――
 少なくとも僕には見出せません。

 ――この人は、自分らしく生きようと努めた結果、必然的に、再起不能の失敗へ至ったのではないか。

 と――
 僕は思っています。

 それゆえに――

 後鳥羽上皇の失敗から学べることは――
 数多くあるのです。