男にとって――
少女は永遠の謎である。
もちろん――
結婚をし、娘が生まれ、その娘が少女になったなら――
少しは謎も薄まろうが――
一生独身であったり、娘が生まれなかったりした場合には――
少女は、男にとっては、永遠の謎である。
女は、違う。
男は、大人の女性と付き合うことで、女を知ることができる。
が、少女と付き合うことは難しい。
差し当たり――
16歳未満の少女と付き合うことは、法律が制限する。
それゆえに――男は、少女を知ることができない。
知る術をもたない。
表面だけなら、知ることはできる。
例えば――僕は今でも時々、中学生や高校生に勉強を教えているが――
少女の表面を知るだけなら、そうした機会で十分かもしれない。
男が知りたいのは――
少女の中身である。
少女という容れ物が、内側に瑞々(みずみず)しく湛(たた)えているであろう何か――を、男は必死に探し求めている。
わかっている。
本当は「瑞々しく湛えているであろう何か」などは存在しない。
少女という容れ物が湛えるものは、少年という容れ物が湛えるものと、そんなには違わない。
そこは、祈りに近い。
少女という容れ物に向かって――
男は祈念を飛ばす。
所詮は、幻想だ。
少女という容れ物が湛える何かなど、本当は存在しない。
が、存在してくれないと、困るのである。
男が少女を求める真の理由は、たぶん下らない。
生殖の機会が多いとか生殖の確度が高いとかいった生物学の蘊蓄(うんちく)である。
そんな話で終わらせたくないから――
男は夢をみる。
少女という容れ物の内側に、瑞々しい純水の輝きを見出そうとする。
けだし――
男は哀れで愚かな生き物だ。