真の芸は、見返りを求めないものなのかもしれない。
例えば――
金銭供与が前提の芸事は、芸としては、どこか不純なものを孕んでいるのではないか――
ということである。
もちろん――
そんなことをいったら――
プロの芸人は、立つ瀬がなくなってしまう。
芸事で生計を立てている人の芸は、すべからく不純なものを孕んでいることになってしまう。
そんなことは、受け入れ難い。
とはいうものの、
――これから芸をお見せします。もし、よろしければ、見物料をお支払い下さい。
という態度の表明は――
芸の心髄を、どこかしら乱しているように思えてならない。
芸人は、やむにやまれぬ気持ちになって、自分の芸に打ち込むものではないか。
それが、芸人の本来の姿ではないか。
その結果、観賞者から謝礼を受け取ることはあっても――
それはあくまで、続発的な事象にすぎない。
芸人が、
――早く自分の芸を他人に(客に)みせたい!
と強く願い――
その芸人の周囲の人たちが、
――ひとつ、彼の芸に付き合ってやるか……。
と弱く受け入れたときに、真の芸は輝きを放つ。