あることに取り組んで、それに挫折し、コンプレックスを抱く――という流れは、おなじみではありますが――
この「挫折」という体験の中身を吟味してみると――
必ずしも挫折の後でコンプレックスを抱くということにはならないと感じるのです。
例えば――
数学者になりたかった少年が、中学・高校の数学でつまずき、大学の数学科への進学を諦め、その後ずっと数学への未練を断ち切れないでいた――
という場合なら、たしかにコンプレックスを抱くことになるでしょう。
が――
数学者になりたかった少年が、中学・高校の数学に退屈し、大学の数学科への進学動機が萎え、その後は全く違う道を選び、そこで華々しく成功した――
という場合なら、コンプレックスを抱くということにはならないでしょう。
数学にコンプレックスを抱くということは、
――今も数学に未練がある。
のです。
あるいは、
――まだ数学に退屈はしていなかった。
のです。
ことは数学に限りません。
何かでの挫折を乗り越え、何かへのコンプレックスを払拭するには――
こうした「未練」という情念や「まだ退屈はしていなかった」という認識を原動力にするのがよいでしょう。
未練がなくなり、退屈をするようになったら――
コンプレックスは消えてなくなるでしょう。